山口光峯堂
熊野那智大社の「表参道 見どころ3選」の3番目として紹介させていただいている、お土産屋さんです。
ここでは、3代目の山口さんにお聞きした話をみなさんと分かちあいたいという趣旨で、再度ご紹介いたします。
単なるお土産店ではなく、実は3代にわたり暖簾を守っている那智黒石を用いた伝統工芸品、硯の専門店です。
この近辺には硯を売っているお店が沢山あったそうです。
どこも機械彫りの硯でした。
そして、手彫りの伝統を守り続け、本物を残したいという使命に動かされ、職人魂を彫り込んだ硯だけが、今、唯一残っているというと、みなさんはどう思うでしょうか。
今回お話しさせていただいたのは3代目の山口さんです。
硯についての造詣は深く、硯に関してお困りのことがある場合は、遠慮なく聞くといいですよ。
電話(0735―55―0020)
納得できる知識と技術力を持っていらっしゃいます。
単に硯と言っても、「わかやまの逸品」とされる「和歌山県優良県産品(プレミア和歌山)」に指定され、皇室にも献上されてます。
和歌山県名匠として表彰され、2003年日本文化デザイン大賞を受賞しています。
本物の硯は使えば分かる
那智黒石の中でも希少とされる玉石(たまいし)で作られた曼荼羅の径(まんだらのみち)があります。
店内で見せていただきました。
通常の四角い硯とは違い、丸っこい形をしています。
なんだかやさしい気持ちになるような、不思議な雰囲気の、宝石のような芸術作品です。
書道をやっていなくとも、手元に置いておきたい、飾っておきたいと思ってしまうような逸品です。
玉石
「硯」という漢字は、「石を見る」と書きますが、山口さんは、石(那智黒石)に関する鑑識眼が大切だとおっしゃいます。
どの石が硯に適しているのか、あるいは、適していないのか。
石によっては、最悪、その硯で墨が磨れないということになり大変なことになります。
それ故、紀伊半島の山深くの現地に行って、適している那智黒石を選び、買い付けするのだそうですよ。
那智黒石は、ちょうど年輪の木目(もくめ)のように固い面と柔らかい面が層になって入り組んでいるのが通常です。
その石の中に、「パワーストーン」、「玉石」、「玉(ぎょく)」「モジュール」と呼ばれる、卵のような丸い形が稀に埋まったように入っているのだそうです。
写真が玉石です。
この玉石とは何かというと、いわば、「不純物をはき出していい所だけが固まったところ」もしくは、「いい所だけが集まって異物を全部はき出したところ」ということです。
那智黒石の中に、もうひとつ那智黒石が入っているというか、そういう状態です。
人間の理解を超えるような現象です。
この均一の組成をしたダイヤモンドのような玉石を使って硯を作ります。
対面で買う「硯」
硯を買う時は、試し磨り(ためしずり)をして欲しいと必ず言われます。
これには理由があります。
先ず、品質に自信があるからです。
品質に自信があるから、店頭での顧客との対話をこの上なく大切にしているということです。
使用者に正しい知識を持ってもらいたい、那智黒石に誤解のない理解をして買ってもらいたいという姿勢です。
硯や、その周辺情報についても、真摯に顧客に答え、伝えていきたいということです。
今の世の中、こういう姿勢は、稀有となってしまっていると個人的には感じます。
硯の相談、購入で、お店に行く時は、事前にお店に連絡するのがいいですよ。
不定休なので、わざわざ遠方から行っても、お店が開いてない場合もあります。
山口光峯さんも、ガッカリすると思います。
硯は専門家にまかせる
「硯は洗わなければいけない。」と、人生初めて山口さんから教わりました。
個人的には、小学校時代から、書道は好きで、中学校、高校と、書道クラブにも入ってましたが、どの先生にも硯は洗うべしと一度もいわれたことはありません。
もう一人の、現地に立ち会ったパートナーも、同じ学生時代だったそうです。
わたしたち2人とも、授業の終わりには、書き損じの半紙で、チョコチョコとふき取っていたのを覚えてます。
それは間違いでー硯は、いいものほど洗わないと(墨汁、墨液は洗いは不要)、ねづまりを起こすのだそうです。
「せめて、墨をすった箇所だけでも洗ってください。」とアドバイス。
理由は、墨に、にかわの成分が入っているので、すれなくなってくるのだそうです。なんと。
墨が、すれなくなると、砥石を買い、それでゴリゴリ掃除しようとしてしまいがち。
品質が低いものであれば、何ら問題はないけれど、良い硯だと、それが問題を起こす。
「下手にさわらないほうがいい。」とアドバイスでした。なんと。
山口さんの硯を使うお客さんの中には、硯に何かの問題が生じた場合、もしくは、墨がすりにくくなると、電話で問い合わせをし、お店に相談しにいく、もしくは、硯自体を送付する方が沢山いらっしゃるとのこと。
往復の必要な送料を顧客が支払えば、無償で対応していただけます。
素人がヘタに直すより、山口さんに対応していただいたほうが、お勧めということでしょう。
ここまで、キメの細かいサービスを提供しようとする職人さんは、私は一度も見たことも聞いたこともないです。
思わず「保証期間が、何年あるのですか?」と聞きたくなった瞬間ですが、山口さんのお店が存在する限り、お付き合いいただけるとのことでした。
通常の尺度では計れない世界がここにはあると感じました。
「硯を初めて買う際、無理して大きい硯を買うのではなく、先ずは小さめの手頃なサイズから始めてみてください。」とアドバイス。
その後、やっぱり大きいサイズがいいということになったらー
その差額だけ払えば、大きいサイズと交換します(裏に「光峯」と銘記がある場合のみ)、とのことでした。
「光峯」という印(しるし)は、「どこに出しても恥ずかしくない」、「非のうちどころのないものだけ」とはっきりと断言しながら、同時に控えめ、謙虚さにあふれたお話を伺いました。なんと。
こういう人がまだ実在しているという・・大きな発見と喜びを感じたことを最後に、記します。
キーホルダー、買って良かったです
碁石や花器、ぺーパーウエイト、彫像など、他に多数のアイテムを売ってます。
私は那智黒石のキーホルダーを買いましたが、実際に使ってみると、かっこいいです。
那智黒石のキーホルダーなんて、持ってる人はいないのでは。
どこにもない、まさに一品です。
おすすめです。
裏に、希望の言葉を3文字の漢字で彫っていただきました。
天皇皇后両陛下も
この写真は1997年頃の天皇皇后両陛下です。
なでしこジャパンの佐々木監督ご夫婦やサッカー日本代表のあの中田英寿さんもご来店されてます。