“寂れた”なんて言わせない 龍王ヶ渕、静寂の美に出会う朝
「奈良・悠久の秘境」をテーマに、心がほどけるような場所を探して日々旅しています。
どなたかの「ここ、良かったよ!」という一言が、次の旅先のヒントになることも。
おすすめがあれば、ぜひ教えてくださいね。
今回は奈良・宇陀市の室生を訪問することにしました。
室生といえば、龍神信仰にまつわるパワースポットが点在する場所。
その中で、今回最初に向かったのが「龍王ヶ渕」でした。
龍神パワーに詳しいわけでもない私が、なぜかこの地に惹かれて―
もしかしたら、読んでくださっているあなたの方が、その理由をすでに知っているのかもしれません。
奈良には静寂の美を具現化した神秘のパワースポットが沢山ありますね。
あまりにも美しいパワースポットなので当然、人に話したくないので話さず、「知る人ぞ知る悠久の秘境」
が実は奈良の本当の名前だったりしてー私は単純にそう思ってます。
龍王ヶ渕へのアクセス
5月24日、午前5時前。天気予報は午後から雨。
それでも「朝の水鏡だけは見たい」と、胸を高鳴らせて車を走らせました。
ネットで見かけた、あの湖面に映る絶景。実際に目で見たら、きっと写真以上の感動がある——
そんな確信めいたものがあったのです。
大阪から出発
龍王ヶ渕がある宇陀市は、奈良県の北東部に位置しています。
大阪方面から車で訪れる場合は、以下のルートが最もスムーズです。
- 国道170号線を南下
- 名阪国道(無料)を経由して「針インターチェンジ」へ
- そこから約15分で現地到着
道中には大型の商業施設やコンビニも多く、買い物や休憩も安心です。
平地のみを走り、トンネル、坂道なしで約2時間のドライブとなります。
向渕(むこうぢ)交差点から集落へ右折
↑黄色の点滅信号を右折すると、集落の入り口となります。
初めての方や、狭い道に慣れていない方は少し緊張するかもしれませんね。私はあまり気になりませんが、上手な運転をされる方を見かけると、感心してしまいます。
途中、数か所で小さな案内板もあり分かりやすくなっていて主要道路をそのまま進めば大丈夫です。
「龍王ヶ渕」とある、茶色の案内板が目印です↑かわいい案内でしょ―「速度注意」の看板もあります
↑上の2枚:ここは一瞬、建物の前で左折しそうになりますが、主要道路に沿って右折するのが正解です。
初めての方は少し迷うかもしれません。

↑この近辺で民家が少なくなります
最後の茶色の案内板です↑
到着です↓ここから堀越神社の参道の始まりです
この参道まで来ると「いよいよ、やってきた」という気持ちが高まります。
何が「いよいよ」なのか自分でもよく分からないのですが、ただただ嬉しい気持ちでいっぱいになります。
↑堀越神社の参道入口を右折です
山の色合いが濃くなり、龍神様は何処にいるのか?と↓3枚ご紹介します↓
龍王ヶ渕駐車場 無料
住所 宇陀市室生向渕1795
池の近くにアスファルト舗装の駐車場8台分があります。トイレはありません。
途中、針インターチェンジに寄り、道に迷ったので、2時間強かかりました↓
宇陀消防署のメッセージ↓かっこいい龍でしょ
早朝の7時過ぎ、先ず空気の味が甘い。そして何かの臭いがするのですが、何なのか不明。
とても優しくて気持ちいい。来て良かった―
近くの東屋へと歩くと、水面が水鏡になっていました。
パートナーが車内で撮影の準備をしていたため、2〜3分ほど撮影できませんでした…。
その間に、風で表面にさざ波が発生し、水鏡は終了。
すぐ上の山を見ると、風が下りてきて、木々の葉っぱをそよがせていました。
そのまま↓水面へと下りてくるのです
白い銀色のさざ波が水面上にできます。とてもきれいで清澄です。
小さな魚達の群れが水面下で泳いでいるかのように見えました。
こちらに向かってくるかと思うと、ふいに方向を変えて、水面を踊るようにゆっくりと移動していきます。
写真では、その動きを写し出せませんが、以下に3枚ご紹介します↓
同じような写真の連続となります↑
龍が水中で泳いでいると一瞬、思いました―そんな訳はない。龍は想像上の動物。私たちの守り神。
沢山の小鳥たちがしきりに鳴いています。
鳥ってこんなに元気にさえずるんだ…と、ちょっと感動しました。
🎥 湖畔のさえずりを動画でどうぞ
池を一周
東屋から橋と遊歩道が続きます。歩いてみました↓
葦の湿原です。
↑湿原と、田んぼだったのか?不明ですね
池は大きくないので、15分〜20分もあれば一周できます。
時間が許せば、ぜひゆっくりと散歩してみてください。
足元要注意の箇所もあります↓
堀越神社近くに戻ってきました。大きな木です↓池の水が深緑色というのが分かります
池の水面全体が動き始めていました。もう、水鏡はすっかり諦めモードです。↓
ピンク色のスイレンの花も咲くのでしょう↓
ユニークな形の石もありました。カエル…に見えますよね?↓実際、池の周囲ではカエルの鳴き声もたくさん
聞こえてきました。
堀越神社
額井岳(ぬかいだけ・812m)近くの標高530mの山の中、自然池のほとりにひっそりとたたずむ神社です。
神社の近くが窪んだ地形となっているので、この辺りから水が湧き出ているのではと想像しました↓
湧き水は実際には複数箇所から出ているのだそうです。
ご祭神は豊玉姫命(とよたまひめのみこと)。「浦島太郎」の乙姫さまともいわれ、水の神、龍神様となります。お参りさせていただきました(感謝)。
ご本殿です↓
本当に来て良かった!…このあと向かう予定の「向渕スズラン群落」と戒長寺へ向かう途中、地元の女性と
立ち話をする機会がありました。とても興味深いお話だったので、次にご紹介します。
地元の女性に話を伺いました
以下、文章中心ですが、ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。
お子さんの教育を考え、都会圏からこの地に移住されて50年という女性に、龍王ヶ渕の昔の様子を伺いました。
「当時は、今よりずっときれいだった!」と何度も力強くおっしゃっていました。
人工物は一切なく、鬱蒼とした森林に囲まれ、怖くて一人では行けなかったとのこと。
遊歩道だけが整備され、葦原は小さく、池は今より広かったそうです。
冬には池全体が氷り、穴をあけてワカサギ釣りを楽しんだとか。釣った魚を水槽で飼っていた思い出
も話されました。
鹿が池の氷上を歩き、向こう岸へ渡っていくロマンチックな情景も印象深く語られていました。
…今ではあまり訪れないそうです。「なんだか、行きたくない雰囲気に変わってしまった」と。実際に住んだ
ことがない私でも、その気持ちが少し分かる気がしました。
神聖な場所でBBQ をしたり、ゴミを放置したりする人たちの存在が悲しいとのこと。
特に気にされていたのは、ハイキングコースの下見で来た関係者が、赤いリボンを木に大量に結びつけたまま
放置して帰ることでした。
「誰も見ていないからいい」ではなく、「知らぬ間に誰かを傷つけているかもしれない」と、心にとめておき
たい言葉でした。
龍王ヶ渕を訪れる際の注意点
龍王ヶ渕は、もともと観光地ではなく、地元の方々にとっては生活の一部でした。それがいつの間にか人気スポットとなり、地域の環境も大きく変わりつつあります。
奈良県観光公式サイト「なら旅ネット」より、重要な注意喚起を引用します。
※龍王ヶ渕は住宅地域の近隣にあり、周辺には小さなお子様もおられます。道路も狭く、お子さん達が飛び出
す危険性もございますので、徐行運転をお願いするとともに、無断駐車、器物破損などなされないようお願い
します。
※また、深夜に車やバイクで通行される方々の騒音により、周辺住民の方々が眠れないなど大変困っていらっ
しゃいます。よって国道28号線の黄色点滅信号を曲がって以降の道につきましては、夜10時以降の車・バイ
クでの走行をご遠慮いただきますようお願いします。
都会でも「生活道路につき通り抜けご遠慮ください」と書かれた看板をよく見かけますよね。今回、私たちも
早朝7時過ぎに極めて低速で通行したつもりでしたが…ご迷惑だったかもしれません。次回はさらに慎重に訪
れたいと思います。
最後に
同じ日の朝9時過ぎに再び訪れてみました。
↑運よく、水鏡が見られたのは9時20分頃でした。息を呑むほどの静けさ。水面のわずかな揺らぎが惜しいくらい、完璧な水鏡でした。
たとえ見られなかったとしても、ここに来れて本当に良かったと感じました。
龍王ヶ淵の周辺観光 静けさに出会う場所
5月下旬にスズランの開花の知らせを心待ちしていました。
5月24日咲いていると知り、早速駈けつけました。
宇陀・室生 向渕スズラン群落
住所 宇陀市室生向渕
宇陀市室生向渕(むろうむこうぢ)にあるスズラン群生地(標高550m)は、自生する日本スズランの南限地
として、1930年に国の天然記念物に指定されています。
宇陀市の「市の花」です。
ホームセンターの園芸コーナーで売られているのは、ヨーロッパ原産のドイツスズラン。丈夫で花径も長く、
葉と同じ高さで花が咲く傾向があり種類が違います。
向渕の日本スズランは、葉の下にひっそりと、小さな釣り鐘状の可憐な花を短期間、咲かせます。
とても貴重ですね。
↑実際に室生向渕(むろうむこうぢ)に行ってみると、優しい木漏れ日を受けながら宇陀市の管理・保護
のもと、大切に育てられているということが分かります。室生の静けさに咲く─スズラン。
実は、スズランは大和高原という高原一帯で広範囲に自生しているとのこと。
最も自生密度の高い室生向渕を一般開放していただいているということですね。
宇陀市って?

スズランを「市の花」としている宇陀市は、奈良県の北東部に位置し、四方を山に囲まれた大和高原(奈良
高原)にある都市です。ほとんどが山林、宅地は4%弱。人口は26,500人。
4つの村と町、大宇陀町(おおうだ)・菟田野町(うたの)・榛原町(はいばら)・室生村(むろう)が
2006年(平成18年)に合併して宇陀市となり、室生村の「村の花」だったスズランを宇陀市の花として
引き継ぎました。
かつての町役場・村役場は、地域事務所として、地名もそのまま大宇陀・菟田野・榛原・室生と継承されて
います。
↑室生にある「龍王ヶ渕」曇天でも幻想的
室生には、室生寺、大野寺、室生龍穴神社、龍王ヶ渕、室生山上公園芸術の森、向渕スズラン群落…等々、
人生に一度は訪れてみたいという秘境が勢揃いしてます。
これからもご紹介していきますので、どうぞ楽しみにお待ちください。
向渕スズラン群落 臨時駐車場 無料
住所 宇陀市室生向渕3156
スズランの開花時は臨時駐車場がオープンするので、車での訪問の場合、この県道28号線沿いの駐車場を使用することを強くお勧めいたします。我が家もそうしました。
うちの軽自動車を走行させるとタイヤが損傷すると憂慮したからです。
以下に道路の写真をいくつか紹介いたしますので参考にしてください。
臨時駐車場のすぐ隣の小さな坂(出入り口)には、どなたかが車の下側を擦った跡が残っていました↑
↑金属製品がタイヤに当たると危なそう…
↑ここは走行しないほうが安全…
群生地の近くのもうひとつの駐車場 無料

駐車場内にもスズランの花壇がありました↑
案内板です↓
木々が林立する先に一段と明るくなっている区画が見え、ここが群生地です↓
「柵内立入禁止」と「天然記念物」の案内板です↓
5月21日が見頃だったようで、3日ほど遅れましたが、とてもきれい!感動しました!
山の辺の道しるべ─戒長寺、そして室生の記憶
戒長寺
住所 宇陀市榛原戒場386
この、お寺の写真1枚を一目見て行こうと決めました。
「ザ・お寺」という雰囲気に惹かれたからです↓
写真を見て一目惚れ↑
この本堂は江戸時代末期の1864年(元治元年)に建立。160年の風雪に耐えた寺…
実際に行ってみたら、写真よりずうっと良かったです↓
有名なイチョウの木は、幹周り約4m、高さ約30mの巨木で「お葉つきイチョウ」と呼ばれ、秋には、落葉
した葉で境内が黄色に染まるといいます。
当日はコケ類?で敷地内の地面が緑と化し、とても美しい世界!
(お葉つきイチョウ:種子を葉につけたイチョウ)
イチョウの巨木↓写真2枚になりました
本堂に至る参道の階段も、なんともいえない雰囲気があります↓
階段を上ると目の前が山門となり、鎌倉時代(正応4年・1291年)の梵鐘(ぼんしょう、重要文化財)が
吊られています↓門と鐘楼(しょうろう:かねつき堂)を兼ねる鐘楼門(しょうろうもん)といいます。
本堂と同時期の江戸時代の建立です↑
お寺の創建は不明ですが、平安時代(12世紀)とされてます。
お寺の案内板↑
眩しいほどの初夏の緑↑
戒長寺 駐車場 無料
約5台、参道のすぐ前にあります↓
公衆トイレ
住所 宇陀市榛原戒場335
戒長寺へと山に登る途中、きれいな公衆トイレがあります。
清掃して下さっている方々がいらっしゃるんですね(感謝)↓
2台ほど駐車できます。
まとめ
龍王ヶ渕を出発点として戒長寺には7分、向渕スズラン群落まで7分というコンパクトな周遊ドライブとなりました。3ヶ所で合計3時間弱でしょうか。
龍王ヶ淵を訪れたら、少し足をのばして静かな季節の風景にも出会ってみてください。
山里の斜面に可憐に咲くスズランや、訪れる人もまばらな戒長寺。
観光地とはひと味違う、奈良の奥行きを感じられます。
大阪から、たった2時間のドライブで室生へ―忘れたものを取り戻す「奈良」に行ってみませんか。